Stripeのアカウントが突然停止された。あるいは審査で承認されない。
このとき、実装の問題だと思って設定を見直す方がいますが、多くの場合そこではありません。 Stripeが見ているのは事業モデルそのものです。コードをいくら直しても通りません。
何が引っかかるのか、どう設計すれば通るのかを整理します。
結論
Stripeの審査は事業内容の評価です。実装で覆せる領域と、覆せない領域があります。
- 覆せる: 表示不足、規約不備、実態との不一致
- 覆せない: 禁止・制限業種に該当する事業そのもの
覆せない場合は、事業モデルを変えるか、別の決済手段を使うかの二択になります。早くそう言うのが誠実です。
引っかかりやすい類型
Stripeは利用規約で禁止業種・制限業種を公開しています。日本で問題になりやすいのは以下です。
運試し・射幸性のあるもの
オンラインガチャ、福袋、抽選販売。「購入時点で何が届くか分からない」構造は、ギャンブルと判定されうる領域です。
前払い・後日提供
商品やサービスの提供が決済から大きく遅れるもの。予約金、クラウドファンディング的なもの、長期の役務提供。未提供リスクとして評価されます。
サブスクリプションの解約導線が不明瞭
「いつでも解約できます」と書いてあるのに、解約フォームがない、電話のみ、といった構造。
デジタルコンテンツの転売・アカウント売買
ゲームアカウント、デジタルコード、ポイントの譲渡。
情報商材・高額塾
効果を保証する表現、返金条件が不明瞭なもの。
アダルト・出会い系に隣接するもの
本人はそのつもりがなくても、サイトの表現で判定されることがあります。
「射幸性」をどう外すか
ガチャ型のサービスで実際に検討した設計を書きます。
問題は「購入金額を下回る価値のものが届く可能性がある」ことです。これがあると賭博性が生じます。
外す方向は1つです。購入金額以上の価値を保証する。
NG(射幸性あり):
3,000円のパック → 300円相当〜30,000円相当のいずれかが届く
期待値が購入額を下回る客が発生する
OK(福袋型):
3,000円のパック → 必ず3,000円相当以上の商品が入っている
上振れはあるが、下振れはない
これは実務上「福袋」と同じ構造です。中身は分からないが、損はしない。この形なら射幸性の問題は原理的に消えます。
ただし、これはコードでは担保できません。 在庫と価格設定の運用ルールです。実装は「そう運用することを前提に作る」だけで、保証するのは事業者側です。
そして、この設計変更は事業として成立するかが別問題です。射幸性が収益源になっている事業では、外すと成り立たなくなります。その場合、Stripeでは無理だと早く判断すべきです。
審査で見られる表示項目
事業モデルが問題ない場合でも、表示不足で止まります。日本では特定商取引法に基づく表記が必須です。
以下が揃っているか、1つずつ確認してください。
- 事業者名(法人なら商号、個人なら氏名)
- 所在地(私書箱・バーチャルオフィス不可の場合あり)
- 電話番号(つながるもの)
- メールアドレス
- 販売価格(税込表示)
- 送料・手数料の明示
- 支払い方法
- 提供時期(いつ届くか、いつ使えるようになるか)
- 返品・キャンセルの条件
- 定期購入なら、契約期間・総額・解約方法
そして重要なのが、サイト全体で記述が一致していることです。
よくある不一致の例を挙げます。
- 特商法ページに「クレジットカード」とだけ書いてあるが、実際はコンビニ払いもある
- 配送日数が特商法ページで「5〜20営業日」、商品ページで「6〜20営業日」
- 利用規約に書かれたサービス内容と、LPの訴求が違う
審査担当者はサイト全体を見ます。 矛盾があると「記載と実態の不一致」として指摘されます。数字の食い違いは、それだけで差し戻しの理由になります。
凍結された場合の異議申し立て
停止された場合、Stripeから理由が通知されます。理由に応じて申立書を作ります。
書くべきこと
- 事業の実態(何を、誰に、いくらで、どう提供しているか)
- 該当すると疑われた分類に、なぜ当たらないか
- 表示・規約をどう修正したか
- 修正後のURL
書いてはいけないこと
- 感情的な主張
- 「他社も同じことをしている」
- 事実と異なる説明
根拠になるものを添えてください。 修正後のページのURL、規約の該当条文、商品の価値を示す資料。文章だけの主張は通りにくい。
通らない場合の選択肢
異議が通らない場合、以下を検討します。
別の決済事業者
日本国内には、Stripeが扱わない業種を扱える決済代行会社があります。手数料は高くなりますが、事業を続けられます。
事業モデルの変更
射幸性を外す、提供時期を早める、対象商材を変える。事業として成立するかを含めた判断になります。
撤退
決済が通らない事業を無理に続けると、後で凍結・入金保留になり、被害が大きくなります。早い段階でやめる判断も選択肢です。
実装者としての立場
決済まわりを請け負う立場から言うと、審査の可否は保証できません。 これは能力の問題ではなく、判断主体がStripeだからです。
できるのは以下です。
- 表示・規約の不備を潰す
- 事業モデルの構造的なリスクを事前に指摘する
- 通らなかった場合の代替を用意する
「必ず通します」と言う業者は疑ってください。 通らなかったとき、その責任は取れません。
実際に、設計から実装まで完了させたにもかかわらず、事業者側が射幸性の高いモデル自体を取りやめて公開に至らなかった案件があります。技術的には完成していても、事業判断が優先されることはあります。
まとめ
Stripeの審査は事業モデルの評価です。
- 表示・規約の不備は直せる
- 事業モデルそのものの問題は直せない
- 直せない場合は、早くそう言う
決済が通らない状態で開発を進めるのは、双方にとって損失です。着手前に事業内容を確認するのが、結局は一番早い。
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